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VOL.149 2008.1.19
日本の生物多様性
「絶滅危惧種が見直し前(2000年)の2,694種から3,155種に」 新レッドリスト 環境省 2007年8月
本日も、日本国政府、第三次生物多様性国家戦略etc.最新知見から。
日本の生物種数は9〜30万種超、狭い国土
ながら豊かな生物相で、陸棲哺乳類、維管束植物の4割、爬虫類の6割、両生類の8割が固有種。先進国で唯一野生サルが生息、クマやシカなど数多くの中・大型野生動物が生息。降水量が豊かで自然遷移が進む中
で、明るい環境を好む多くの植物や昆虫類が生育・生息してい
るため、湿原、草原、氾濫原、二次林などの生態系が、明るい状態を保っている
。
南北3,000kmにわたる国土、季節風による四季変化、標高差や数千の島嶼を有し、大陸との接続・分断など、火山噴火や急峻河川の氾濫、台風など
の攪乱によって、多様な生息・生育環境がつくり出されてきた。さまざまな段階の生態系が、さまざまな緯度、標高、水環境に立地することで、日本は非常に豊かな
自然環境、生態系の多様性を有している。
絶滅危惧種
日本に生息・生育する爬虫類
・両生類・汽水・淡水魚類の3割強、哺乳類・維管束植物の2割強、鳥類の1割強
の種が、絶滅のおそれがある。生物が減少する原因は、森林
・氾濫原・草原・湿地の減少・消失(他用途転用、河川の直線・固定化、農地開発、沿岸域埋立)による生息地・生態系の分断・劣化・縮小・破壊・消失、生物資源の乱獲・盗掘・過剰採取(鑑賞用や商業利用)など直接的な生物採取、人間の働きかけ縮小・撤退に伴う環境変化、外来種による生態系喪失・攪乱など。
【哺乳類(6種減)42種
】 コウモリ類46種で、ランクの下がった種13種。イリオモテヤマネコはランクが上がったほか、ジュゴンを新たに絶滅危惧種に。ヤクシマザルとホンドザルは、個体数増加からランク外
。
【鳥類(3種増)92種
】 ランクが下がった種11種、新たな絶滅危惧種9種を含め、ランクが上がった種26種。サシバが新たに絶滅危惧種、オオタカは準絶滅危惧種に。
【爬虫類(13種増)31種】 うち30種は南西諸島に生息。
【両生類(7種増)21種】 サンショウウオ類19種のうち11種が絶滅危惧種
。
【汽水・淡水魚類(68種増)144種
】 タナゴ類などのランクが上がった。琵琶湖のニゴロブナ、ゲンゴロウブナも新たに掲載、オオクチバスなどの外来種による影響。ムサシトミヨやヒナモロコ、メダカは
、引き続き絶滅危惧種
。
【昆虫類(68種増)239種
】 ゲンゴロウ類についても多くの種のランクが上がる
。
【貝類(126種増)377種
】 河口部などの汽水域に生息する種の多くが絶滅危惧種、陸産貝類(カタツムリなど)の生息状況が悪化
。
【その他無脊椎動物(23種増)56種】 シオマネキのランクが上がり、カブトガニは引き続き絶滅危惧種
。
【維管束植物(25種増)1,690種】 キレンゲショウマなどシカの食害によって絶滅危惧種に。アサザ、サクラソウ、サギソウなど保全努力の結果、準絶滅危惧種となった種も
。
【維管束植物以外(134種増)463種
】 特に湖沼、ため池などに生育する藻類について絶滅危惧種となった種が多い。
戦後、日本は急速な変化を遂げ、1955〜95年に実質GDPは10倍以上の481兆円。1960〜95年に製造品出荷額は20倍の309兆円、建設投資額は30倍以上増加。宅地面積の年間増加面積は、1940年までの50年間の平均と比べ60年代で10倍強、70年代で20倍弱と、急激に面積が
増加。
第一次産業就業人口は、戦後50%弱から2000年に5%。基幹的農業従事者数は、1960年の1,175万人が05年に224万人、高齢者割合は、1980年代までの20%前後が05年に57%。干潟面積は、1945〜94年に4割減少。東京湾ほぼ全域に分布していた干潟が、今では三番瀬と盤洲干潟などに小さく残されているのみ。湿地は6割以上が消失。自然林や二次林は昭和30〜40年代に多くの面積が減少、自然海岸は本土で5割を切るなど急激に生物多様性が損なわれていった
。
特に70年代にかけて、エネルギー源が薪炭から石油などの化石燃料にシフト、化学肥料生産量が急激に増加、農村地域における薪や堆肥などの生物由来資源の利用低下、里山林や野草地との関わりが希薄に。結果、萌芽更新や火入れなど人為的管理により維持されてきた里山林や野草地が放置、急激に減少、かつては普通に見られた里山や草原に生息・生育する多くの動植物種が絶滅の危機に
。
1995年以降実質GDPは微増、製造品出荷額・建設投資額は減少。沿岸域の埋立面積は年間800ha程度で横ばい、農地・林地から都市的利用への転換面積も年間1.7
万haで横ばい、緩やかになってきてい
るが、なお新たな開発は続いてい
る。今後、人口減少が進む中で、特に既開発地の再開発を中心とすることが
出来れば、全体としての急激な開発圧力は現在よりも減少。2050年、総人口は1億人を切り、高齢者が40%に。地方の中枢都市以外の地域では、人口が現在の7割に
。一層の過疎化が進み、地域によっては集落が存亡の危機。
経済・社会のグローバル化に伴い、輸入額は、1950〜2005年に1,638倍の57兆円、貨物輸入量は78倍の8.2億トン。1965〜2004年に、年間入国者数が41倍の2,400万人。生きている動物は2006年に、ハムスターなどの哺乳類(家畜を除く)が30万頭・匹、鳥類(家禽を除く)が4万羽、カメ類などの爬虫類が50万匹、昆虫類が6千万匹、観賞魚6千万匹超を輸入。ペットなど動植物の輸入は野生のものも含まれ、日本と相手国の生物多様性に影響を与える。
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つの地域区分
日本の生物多様性は、地形・地質や気候などの自然的基盤と、その上に積み重ねられ
てきた人々の長い年月にわたる暮らしの営みによって形づくられてきた。
私たちの暮らしは、自然の健全な生態系に守られている。陸域
・沿岸・海洋域も含め、生態系ネットワークが分断されている場所では、その繋がりを取り戻すことが必要。
【奥山自然地域】
・・・・ 脊梁山脈など相対的に自然性の高い地域
国土の19%。原生的自然、水源地、自然林(18%)・自然草原(1%)の自然植生の多くが分布。
急峻な山岳地、半島部、島嶼といった人為の入りにくい地域に分布。クマ、カモシカなど大型哺乳類やイヌワシ、クマタカなど猛禽類の生息域。動植物が将来にわたって存続していくための核となる地域(コアエリア)
として重要。急峻な所では、地形改変により一度植生が失われると回復困難、特に高山・特殊岩地生態系は人間活動に対し脆弱
。
1978〜2003年で、シカ、カモシカ、サル、クマ、イノシシ、キツネ、タヌキの7種すべてが分布域拡大。ニホンジカの生息区画率が24%から42%に増加、ニホンカモシカでは17%から29%に。南アルプスや日光など15国立公園でシカによる希少高山植物の食害や森林での樹皮はぎなど
。下北半島や西中国地域のクマなどのように、生息地分断などにより地域的に絶滅のおそれがある野生生物も。ライチョウは、平均気温が3℃上昇した場合、高山帯縮小に伴い絶滅する可能性が高い。
【里地里山・田園地域】
・・・・ 自然の質や人為干渉が中間的な地域
国土の75%
。二次林(24%)、植林地(25%)、二次草原(3%)、農耕地(23%)
、水田、水路、ため池など。自然林や氾濫原などのあとに成立した二次的自然といわれる地域
、薪炭林・農用林などの二次林、採草地などの二次草原は、以前は経済活動に必要なものとして維持、人の手が加えられた地域は、オキナグサやオオルリシジミなどその環境に特有の多様な生物を育んできた。
明治時代まで、牛馬飼養や堆肥生産のため、関東以南では広く草山が広がり、必要な資源を得た一方、広大な草原・湿地は多くの昆虫類などの生息場所に。農地、草原、溜め池などさまざまな形での人間による攪乱
でモザイク状に入り組んでいた生態系が、
多様性を失ってきており、堤防がつくられ洪水氾濫が少なくなることで攪乱減少、サシバ、ヤイロチョウ、ギフチョウ、カタクリ
、メダカなど数多くが絶滅危惧種。分布域大幅縮小は、ウズラ、アカモズ、チゴモズなど、外来種では、ベニスズメ
が縮小、ソウシチョウ、ガビチョウが分布拡大。
昭和30年代以降、二次林放置が増え、二次草原は大幅減少、草山はおろか、原っぱすら少なくなった。昭和50年代からは過疎化・高齢化に伴う耕作放棄地増加、未収穫作物放置、狩猟者減少、積雪量減少などで中・大型哺乳類が増え、1983〜2003年で、シカ1.7倍、サル1.5倍、イノシシ1.3倍に生息域拡大。2006年、農作物被害額196億円、ツキノワグマによる人身事故140件、4,300頭が捕殺。
人工林は、採算性低下・生産停滞から、間伐などが行われないことで、森林の水源涵養、土砂流出防止機能や生物生息・生育環境の質の低下が懸念。奥山地域に近く、手入れしないで自然林に移行するミズナラ林やシイ・カシ萌芽林などは、自然遷移に委ねることが適当。
コムクドリは、1978年以降産卵時期が早くなっている(0.73日/年)。地球温暖化が進行すると、ニカメイガ、ツマグロヨコバイなど害虫発生量増加、発生地域・時期
が変化、イネの収量・品質低下。ウンシュウミカンの栽培適地北上
。ヨモギやヤマハギなど外来種による遺伝的攪乱のおそれ。農作物受粉に利用されるセイヨウオオマルハナバチは、在来のマルハナバチとの営巣場所をめぐる競合や、受粉に寄与せずに蜜を吸う習性による繁殖阻害。ペットが野外に定着、分布拡大しているアライグマによる、農作物被害や在来種捕食など。
温室効果ガスを削減するには、森林の劣化・減少を防ぎ
(炭素を樹木
・土壌に固定)、湿原・草原を保全
し(炭素を泥炭・土壌に貯蔵)、不耕起農法を実施する。生態系の適切な管理
(人工林間伐、里山林管理、水辺の草刈り、二次草原の採草など)によって生じる草木質系バイオマスを、ペレットストーブ、バイオエタノール、草資源
発電などとして利用、木材の住宅用資材利用も、長期に炭素を貯蔵する。
森林
日本の森林は67%、スウェーデン70%
、アメリカ33%
、イギリス12%。北海道東部のエゾマツ・トドマツ林や本州北部のブナ林、中部太平洋側のスダジイ林など重要植生が396地域に分布。自然林から人工林までさまざまなタイプの森林が多様な野生動植物が生息・生育する場となるなど
生物多様性の重要な構成要素。
キノコや山菜、木の実など豊かな恵み、森林は風土が育む食材の宝庫。間伐・広葉樹林化・長伐期化など、
生きものが多く生息・生育する多様で健全な森林整備、川づくり
・河畔林保全は、災害・土壌流出防止、安全な飲み水確保に寄与
、自然地形
に従って居住環境を整備することも安全な暮らしに寄与する。
農地
日本は豊かな水と肥沃な土壌に恵まれ、農産物はさまざまな生き物との繋がりの中で育ち、クモなどの益虫は農地で害虫を含む多くの虫を食べることで命をつなぎ、農産物の生産を助けている。水田をはじめ農地には多様な生き物がいて、その生きものの循環を利用し、動植物を育みながら農産物を生産している。農業は食料生産に加え、多様な生き物も生み出す活動、環境に配慮した農薬・肥料など適正使用を進め、有機農業をはじめ環境保全型農業を積極的に進めることが、生物多様性保全、安全な食の確保に寄与する
。
日本人の主食は、コメ、コムギ、ソバなど数種。国内だけで維管束植物は7,000種以上。多くの野生種から最も有用な生物を選抜
・交配していく歴史が、農業の進歩。特定の生物を改良、効率を上げることで豊かになってきたが、品種改良は一様化という面も
。選択肢を広げるために近縁植物の豊かな遺伝資源
の健全な維持
が必要。効率的効果的な農産物生産を支えるものとして生物多様性は重要。
特色ある風土は、地域固有の生物多様性と深く関係し、さまざまな食文化、工芸、芸能などを育む。食文化は地域でとれる野菜や魚、キノコなどの食材を、その土地にあった方法で調理することで生まれ、雑煮も、材料や調理法、餅の形まで地域によって特徴がある。日本は高温湿潤なため発酵食品が発達、漬け物、馴鮨、味噌、しょうゆ、日本酒などは地域に適した微生物、気候、水、食材が複雑に関係。
【都市地域】
・・・・ 人間活動が優先する地域
国土の4%、高密度利用、高環境負荷集中、緑地は極少。ヒバリやホタル類など多くが郊外に後退、斜面林・社寺林・屋敷林など島状に残存する緑地に孤立して生きる生物、カラス類やムクドリなど人為的環境に適応可能な生物が生息・生育。お堀や河川、水路に生息する魚類などは少なく、ミドリガメ、緑化植物など外来種がはびこる。自然とのふれあいニーズは急速に高まりつつあり、自然との付き合い方を知らない子どもや大人が増加。
ソメイヨシノの開花日は、50年間で4.2日早まっている。気温上昇により媒介生物の分布拡大、大規模な感染症流行の感染リスク高まる。日本に生息しない毒を持つセアカゴケグモが関西地方に、ハイイロゴケグモが沖縄県などで確認。夏に訪れるツバメは、主にフィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム南部で越冬、台湾は
重要な中継地。日本にやってくる夏鳥たちは、日本の生息地保全とともに、アジアの国々の越冬地が保全されていなければ生きていけない。
都市において、豊かな生物多様性を確保するため、その核(コア)となる、まとまった規模での生き物の生息・生育空間の確保が重要。現在、豊かな森林生態系が見られる明治神宮の森も、100年先を考えて人の手で創られてから、100年近い年月を経て今のよう
な豊かな森になった
。人工的に造成し、現在では豊かな生物多様性を有している明治神宮の森を参考に、都市の中や臨海部に、森とも呼べる大規模な緑地空間の確保を。
【河川・湿原地域】
・・・・
森や里と海をつなぐ生態系ネットワークの軸となる水系
河川、湖沼、湿原、湧水地など。魚類・水生生物・水鳥などが生息・生育。土砂や栄養分、汚濁物質を下流へ運び、海からサケやウナギなどが遡上。特に湿原は生物多様性が豊かで、人為影響に脆弱。河川沿い氾濫原の湿地帯や河畔林は、農地・宅地
などとして開発
、河川改修や流量減少、水循環経路変更や分断、砂礫の供給減少、攪乱減退や水質汚濁などで、水草の1/3
の種など多くの絶滅危惧種が存在。環境改善でアユの遡上回復も。
カワウは、かつて生息数が大幅減少、水質改善や食物資源増加、コロニー保護などにより、急速に分布・生息数が増加、アユ、オイカワなどを食害するなど漁業被害が生じ、フンにより樹木が枯れる被害も
。アオサギは分布域大幅拡大。シギ・チドリ類の一部の種も繁殖分布縮小。冬鳥、マガン・オオハクチョウなどの多くは夏の間シベリアで繁殖、冬を日本などで過ごす。淡水湿地に主に依存するマガン、ヒシクイなどでは、越冬地の北上が1990年代以降顕著、北海道で定期的に越冬する群れが現れ、分布が拡大。シギ・チドリ類は、干潟を
渡りの中継地として春秋に利用、クロツラヘラサギは黄海沿岸の離島で繁殖し日本で越冬。小形サギのオオヨシゴイは絶滅危惧種
。
タンチョウは、給餌や
生息環境保護によって数十羽から千羽程度まで個体数回復、遺伝的多様性は非常に低い。個体の人為的移動・移入による遺伝子攪乱も、種内の遺伝的構造を乱す。ゲンジボタルの発光周期は遺伝的特性の違いで西日本と東日本で異なっている。東京都に中部や西日本の遺伝的特徴を持ったものがかなり見られ、人為的持込による影響が。オオクチバスなどは広範囲に分布、在来種の捕食による生態系や漁業への影響が。カミツキガメにかまれる被害も。
水は生命の源であり、森林と海は河川でつながり、土砂の移動により干潟・砂浜などが形成されるほか、森林から供給される栄養塩類は川や海の魚をはじめとする生きものをはぐくみ、豊かな里海を創る。里
では、河川や湿原のほか、水田、ため池や水路などの人が築いてきた水系も含め
ネットワークが形成、魚類などが移動などに利用。河川、湖沼、湿原、湧水、ため池、水路、水田などを途切れなく結ぶ生きものが行き来できるネットワークの形成を。
【沿岸域】
・・・・ 海岸線を挟む陸域及び海域
35,000km(地球の3/4周)の長く複雑な海岸線、豊かな生物相を持つ干潟・藻場・サンゴ礁など。里海。負荷・栄養物質や淡水が流入、水産資源生産、水質浄化など。人口・産業集中、埋立て、海岸線人工化、水質汚濁や河川との分断・減少の強い圧力
から、干潟などが減少・劣化、沿岸漁業の減少、底生生物に影響。干潟のカブトガニやシオマネキが絶滅危惧種。大型海藻海中林などが著しく衰退する磯焼け、サンゴ白化、漂流・漂着ごみによる影響も。
島国日本は、暖流と寒流がぶつかる豊かな海に恵まれ、海洋、沿岸の藻場・干潟、川や湖で獲れる数え切れないほど多種類の魚貝類、イカ・タコ類、海藻など
自然の恵みが食卓に。サケ、マスが海から河川を目指し、春にアユの遡上が見られ
、ウナギやマグロも、シラスウナギや小マグロを獲ってきて養殖したものを含め、多くを自然の力に依存
。
温暖化で漁獲対象種の生息域北上、漁場・漁期が変化、1985年以降、北海道道南のキタムラサキウニが、宗谷地方でも多く獲れるように。亜熱帯
〜熱帯沿岸域を生息地とするナルトビエイが、有明海
・瀬戸内海で大量生息、アサリやタイラギへの漁業被害、漁業へ悪影響を与える生物の北上も。
日本で孵化したアカウミガメは、北アメリカ沿岸まで回遊し成長、日本に戻って産卵
。河川に遡上するウナギも、北太平洋マリアナ諸島沖で孵化。日本で孵化したサケがベーリング海などを回遊、日本で繁殖しているザトウクジラが北アメリカ沿岸を餌場としているなど、多くの回遊魚
・海棲哺乳類が国境と関係なく広範囲の海を利用。渡り鳥やウミガメ、海の哺乳類の一部などは環太平洋諸国から日本にやってきており、日本の生物多様性は、アジア地域とのつながりが特に大きい
。
【海洋域】
・・・・ 沿岸域を取り巻く広大な海域
国土の12倍。海洋は地球表面の7割、水循環の巨大なストック、膨大な熱エネルギーにより気候形成、CO2の大きな吸収源(シンク)。陸上の気候、動植物の分布や生態系も海に強く影響され、親潮・黒潮
・対馬暖流と寒冷・温暖な水塊が遠隔地の生物とともに運ばれてくることで、多様な環境が形成、日本海溝など深海の変化に富んだ海洋構造が、海洋の生物多様性を豊かなものに。日本近海は同緯度の地中海や北米西岸に比べ海水魚種数が多く、世界に生息する112種の海棲哺乳類のうち50種(クジラ・イルカ類40種、アザラシ・アシカ類8種、ラッコ、ジュゴン)、世界の15,000種の海水魚のうち3,700種が生息。
各国から排出されるごみや有害化学物質、船舶流出油などが生態系に影響。世界中の海がつながっており、広く移動する魚類が多くあることなどの点も含め、地球規模の海洋の生物多様性に依存
。
【島嶼地域】
・・・・ 沿岸域・海洋域にある島々
3,000以上もの大小さまざまな島嶼、小笠原諸島や南西諸島をはじめ海に隔離された長い歴史の中で、独特の生物相が見られる。小さな面積の中に微妙なバランスで成り立つ独特の生態系が形成、生息・生育地の破壊や外来種侵入による影響を受けやすい脆弱な地域。もともと分布が非常に限定された地域固有種が多く、人為的な影響も受けやすいことから、島嶼地域に生息・生育する種の多くが絶滅のおそれのある種に選定。
ジャワマングースは生息地拡大、ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなどの希少な野生生物の捕食者として大きな脅威、養鶏や農作物への被害も。小笠原諸島のノヤギや沖縄本島やんばる地域のノネコのように、もともとその地域には生息しなかった生物が持ち込まれることにより影響を与えること
も。
産業
長い年月をかけ進化・適応してきた生き物たちは、人間の技術では真似出来ない素晴らしい機能や能力を多く持っている。カイコからとれるシルクは通気性、吸湿性、肌触りに優れ、紫外線をカット
、役割を終えた後は自然に分解され生態系に負担をかけ
ず、化学繊維技術が発達しても完全に真似出来るものではない。渡り鳥が少ないエネルギーで長距離を飛べることは、飛行機ではとても真似できない。自然界にある形態や機能を模倣(バイオミミクリー
)、ヒントを得ることで、画期的な技術革新をもたらすことが
出来る。カワセミの嘴をまねた新幹線デザインや、ハス葉の表面を真似
た汚れの付きにくい塗装開発など、豊かな生物多様性は、産業への応用、将来の技術開発の可能性を秘めた宝の山。
文化
島国日本は、暖流と寒流がぶつかる豊かな海に恵まれ、四季変化があり、湿潤気候は豊富な降雨をもたらし、多くの動物が棲み、さまざまな植物が息づいている。古来、豊葦原瑞穂国と呼ばれ、すべてのものが豊かに成長する国土で日本人は四季とともに生きる文化を育んできた一方、地震や火山の噴火、土砂災害など常に自然災害と隣り合わせの生活を余儀なくされて来た。
豊かで荒々しい自然を前に、古来より日本人は、農業や林業、沿岸域での漁業の長い歴史を通じ、自然を尊重し、自然と対立するのではなく、自然に順応した形で様々な知識、技術、特徴ある芸術、豊かな感性や美意識を培い、多様な日本固有の文化を形成、その中で、多くの生きものや豊かな自然と共生する、生きとし生けるものが一体となった自然観がつくられてきた。地域によって異なる伝統的な知識や多様な文化は各地の豊かな生物多様性に根ざしたもの。
日本では、長い時間をかけて農作物生産などのために畑、水田、溜め池、草地などを形成、その際、自然に対する畏怖から、鎮守として祠を置き八百万の神を祀り、その周りを鎮守の森で覆った。こうしたすべてを利用し尽くさない考え方は日本人の自然との共生の姿を表しており、里地里山も、利用し過ぎないための地域独自の決まりや仕組みがあり、現在でも山菜を採るときに来年以降を考え一部を残す人たちはたくさんいる。これから自然と共生する社会、ライフスタイルを築いていくためには、こうした限りある自然や資源を大切にしてきた伝統的な智恵や自然観を学ぶことが必要
。
日常的に自然と接触する機会がなく、自然との付き合い方を知らない子どもたちも増えてい
る。自然の中で遊び、自然と密接に関わることを知らないまま育つことが、精神的な不安定が生じる割合を高める。豊かな自然に接し、学ぶ機会を子どもたちに提供することが、次世代を担う子どもたちの健全な成長のために必要。
ご飯、野菜、魚、肉、木材などは、水田、森林、海などからもたらされる。日本人は、食料6割、魚介類5割、木材8割を海外から輸入、暮らしが世界の自然資源・生物多様性の恵みの上に成り立っている。世界的には、過剰耕作・放牧など資源収奪的生産による土地劣化、過剰・違法伐採、火災による森林の減少・劣化、過剰な漁獲による海洋生物資源減少などの生物多様性の損失が懸念される中、地球規模の視野に立ち、窒素循環などの物質収支、自然環境や資源の持続的利用の実現に努力する必要がある」
第三次生物多様性国家戦略
良い田んぼか悪い田んぼかは、生き物が決めてくれる
「コウノトリは里山で暮らし、田んぼや川のドジョウやトンボを餌にする。コウノトリ1羽が生きていくためには4haの田んぼが必要とされる」 日経エコロジー 2007年10月
「コウノトリ育む農法の田んぼ @栽培時に化学肥料を使わない A無農薬・減農薬にする B水管理をして、田んぼに7月半ばまで水を張る。そうするとオタマジャクシがカエルに、ヤゴがトンボになり、コウノトリの餌が増える。通常の田んぼより圧倒的に水生生物が多く、生物多様性に富む」
兵庫県
「生物多様性を考えた栽培方法だ」 堀田和則
「今も雑草と格闘している。除草機を入れるか、手で取るしかないと覚悟を決めた。手間ひまはかかるが、それでもこの農法は続けたい。朝起きたら自分の田んぼにコウノトリが降りている。『うちの田んぼにはおる』、『うちのにはいない』と農家の間でも話題に上る。良い田んぼか悪い田んぼかは、生き物が決めてくれる。最近は、米の付加価値が上がる、経済効果があるからコウノトリ育む農法に取り組むという農家も増えた」 畷悦喜
「『コウノトリ育むお米』は2006年産が6300万円の売上で、2007年産は1億3000万円を見込む。今年は無農薬・減農薬の田んぼが102haに上った」 JAたじま
「割り箸はもともと樽や桶の端材の有効利用として生産が始まった。現在では9割以上が海外産、ほとんどが中国産で、日本に輸出される割り箸用木材は0.09%。割り箸の素材は植林されたマツなど。熱帯諸国の木材輸出量に占める割り箸用木材比率は0.8%以下(1990年)。健全な林業発展のためには確実な需要が必要で、端材も含め無駄なく商品化し、収益を上げてこそ、持続可能な林業が実現でき、森林保護につながる」 田中淳夫
「日本には、世界の焼却炉の実に2
/3である約1300基が存在(2005年)し、一般家庭からは、年間5000万トンものゴミが排出されます。エネルギー・質量保存の法則は、この大量の物質が、燃やしても埋めても消滅しないことを示しています。エントロピー増大の法則は、ゴミの焼却によって生じた有害物質、焼却灰といった人工物質の物エントロピーが自然の中で循環されず残り続け、またゴミ処理にさらなる燃料などの資源を使うことが熱エントロピーをますます増加させ、地球エンジンを熱死へと向かわせ、その歩みを加速させていると警告しています」
広瀬立成
日本の国技は、ゴルフ場1箇所よりも遥かに自然に対する負荷が少ない。そもそも自然の恵みに感謝することが起源。西洋文明と東洋文明の自然観の違いです。地球温暖化、生物多様性の観点からも、西洋文明の行き詰まりは明白。ゴルフ場に化石賞を贈らないといけない。これまでの生き方では、地球がもたない。尊皇攘夷じゃないけれど、新しいかたちの洗練された世界文明のお手本が必要。ポスト資本主義社会は、幸せ主義社会とでも呼ぶべきものです。ヒトの幸せにとってプラスなら断固として推し進める、マイナスなら即座にやめる、そういう社会です。時間がない。
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